CSへの挿入

 上室性不整脈のEPS/ablationの際にはカテーテルを冠静脈洞(CS)に留置することが多い。CSカテーテルにより左房僧帽弁輪の電位が記録でき、RA,Hisに留置したカテーテルから記録される電位と合わせて、心房のactivation sequenceを把握するのに有用である。特に左側副伝導路の症例では診断、アブレーションの位置決定に必須である。
 CSカテーテルは内頚静脈あるいは大腿静脈からのアプローチをとるが、内頚静脈からのアプローチのほうが容易である。大腿静脈からのアプローチではデフレクタブル・カテーテルを用いる。
 内頚静脈アプローチ:RAOにて房室間溝の位置(心臓のシルエットで心室基部の白く抜ける部分)を確認する。CSカテーテルをまず右室に挿入する。右室に挿入したカテーテルをカウンタークロックワイズにひねり、中隔に沿わす(LAOで中隔に沿っていることを確認する)。カウンタークロックワイズに軽くトルクをかけたまま、RAOでゆっくりと右房側に引いてくる。房室間溝の位置でカテーテル先端がCSに落ち込むので、ややクロックワイズにもどしトルクを解放し、LAOを見ながら心臓のシルエットに沿って、ゆっくりと進める。
 大腿静脈アプローチ:RAOにて房室間溝の位置を確認する。CSカテーテルをまず右室に挿入する。右室内でカテーテルを曲げ、クロックワイズにひねり、中隔下部に沿わす(LAOで中隔に沿っていることを確認する)。クロックワイズに軽くトルクをかけたまま、RAOでゆっくりと右房側に引いてくる(slow pathwayアブレーションのマッピングと同様)。房室間溝の位置でカテーテル先端がCSに落ち込むので、ややカウンタークロックワイズにもどしトルクを解放し、LAOを見ながら心臓のシルエットに沿って、ゆっくりと進める。カテーテルが下を向いて進みにくいようなら、カテーテルの曲げを解放し、CSに沿わせる。カテーテルを進める際には軽くクロックワイズにトルクをかけながら進めると良い。LAOで4時以降はカテーテルをさらにクロックワイズにひねり、CSカテーテルのカーブをCSのカーブに沿わせるように反転させ進める。
 ポイント:

  • カテーテルを右房から直接CSに挿入しようとすると、tendon of Todaroに阻まれることが多いので、必ず右室からアプローチする。
  • カテーテルが容易にCSに落ち込まない場合には、CS開口部が上下にずれている可能性があるので、房室間溝のシルエットに沿って上下に探す(デフレクタブルカテーテルだと容易)。
  • 開口部にThebesian valveが発達している場合には挿入が容易ではないので、デフレクタブルシースあるいはロングシースを用いて、CS開口部を丹念にマッピングする(前方あるいは上方からのアプローチが奏功することが多い)。
  • どうしても挿入困難な場合には右房造影あるいは左冠動脈造影の遅延像を用いて、CSが右房に開口していることを確認する。左上大静脈遺残に冠静脈洞右房開口部閉鎖が合併することがある。
  • Marshall veinあるいはThe valve of VieussensのためにLAOで4時方向でカテーテルが進まないことがあるので、抵抗がある場合にはカテーテルを若干引き戻し、カテーテルをひねる、あるいは少し曲げて、違ったアプローチで再度進める。
  • CSは静脈であり、容易に解離・破れるので慎重に進める。
  • Marshall VeinあるいはLateral Veinに迷入することがあるので、留置後に記録される電位を確認し、必要であれば本幹を選択しなおす。

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