誘発試験

 どのぐらいしつこくVTを追うかは、術者に依存している。

 検査中には様々な不整脈が誘発されることがあり、患者の症状の原因となる不整脈(ターゲット不整脈)、実際に外来で発生しているが症状の原因ではない不整脈、検査中のみ誘発される不整脈と様々である。不整脈医は検査中に治療すべき不整脈と放置しておいて良いものとを選り分ける必要がある。
 器質的心疾患に伴う不整脈、とくに心筋梗塞後のVTの場合にはEPS中に何種類ものVTが誘発されることがあり、どこにエンドポイントに設定するかは術者にまかされている。一般的に器質的心疾患に伴うVTのエンドポイントはアブレーション後、持続性心室頻拍が誘発されないこと(心室細動、非持続性心室頻拍は一般的に非特異的とされることが多い)が最終エンドポイントであるが、様々な条件によりエンドポイントの設定は異なってくる。最低限のエンドポイントはターゲットVTが誘発されなくなることではある。
 エンドポイントの設定に影響を与える要因としては
 1.患者の状態。心不全が重度の場合には検査時間の延長・プログラム刺激の増加に伴い、心不全が悪化する懸念があり、アブレーション後の再誘発には慎重になる。
 2.VTの因子。a.ターゲットVTの設定。ターゲットVTの12誘導心電図が記録されている場合には、最低限のエンドポイントの設定は容易である。しかしながら多くの場合には12誘導心電図はなく、ICDログ(頻拍周期、far-fieldl egm)より推測するしかない。b.誘発性。アブレーション前にプログラム刺激で容易に誘発されるVTの場合にはチェックも行いやすい。c.誘発されるVTの数。誘発されるVTが少ない場合には、チェックも行いやすいが、不安定なVTが複数誘発される場合にはエンドポイントの設定が困難になる。d.アブレーションの状況。はじめに安定した持続性心室頻拍が誘発され、よいマッピング(エントレインメント・マッピング)が得られ、アブレーションにより停止に至った場合には、再誘発を試みようという気にもなるが、アブレーション前より血行動態の破綻する速いVTのみ誘発され、マッピングもサブストレイト・マッピングに頼り、洞調律中にアブレーションをしたような場合にはアブレーションの効果に疑問がある。とくにもともとの誘発条件が厳しい場合には誘発に時間がかかることもあり、再度誘発を行うかどうかは迷うところである。
 5.検査時間。透視時間。
 
 一番は患者の状態に合わせながら検査をすすることが大事であるが、アブレーションの成果を評価するためにもできるだけ再誘発試験を行うことが重要だと感じる。

 一般的にはあっさりとした術者がfellowや看護士からは好まれる。