カテーテルの三尖弁の通し方

 カテーテルを三尖弁に通すことは容易であるが、時になかなか通過しないことがある。そんなときのポイント。
 基本は:透視のみかたを参照
 カテーテルのカーブが足りずに通過しない場合。:カテーテルをクロックワイズにひねり、中隔寄り(His束付近)に向け、カテーテル先端を三尖弁輪に引っ掛ける。少しカテーテルをすすめ、たわみをつける。そのままでは中隔に当たり進まないことが多いので、今度はカウンタークロックワイズに軽くひねりながら進める。カテーテルの先端(カーブ)が三尖弁輪で滑り、カテーテルが右室腔に進む。
 右房が大きくカテーテルが三尖弁輪に引っかからない場合:カテーテルを一旦体外に抜き、手でカーブをつけてから再度試みる。体内に長く留置した診断カテーテルは柔らかくなり、カーブもとれてくることが多い。

 ポイントは透視(RAO/LAO)を確認しながら、カテーテルと心臓の位置関係を把握しながら検査を進めることが重要。カテーテルの留置が困難な場合には無理して一つのカテーテルに固執せず、カテーテルを交換(カーブの大きい物に交換)あるいはロングシースを用いて留置するなど柔軟な選択が必要。留置困難だからといって、必要なカテーテルを省くと後々の診断、アブレーションに影響してくる。

透視のみかた

 EPに使用する透視のViewは通常RAO/LAOをもちいる。CARTOなどのマッピングシステムを用いていないときはカテーテルを動かす際に、透視でカテーテルの動きを確認する。特にカテーテルを進める場合には抵抗がないかどうか、カテーテル先端の動き、シャフトのしなりに注意する。カテーテルに抵抗を感じた場合には、別のViewで確認し、カテーテルを戻し、先端を自由にする。
 一般的にカテーテルの動きがよくわかるViewを用いる。RAO:心臓の長軸方向(心基部/心尖部)、上下方向。LAO:短軸方向(中隔/側壁)
 例:RVaカテーテルを右室心尖部に持っていきたい場合には

  1. 右房内でRAOでカテーテル先端が心尖部を向いていることを確認する。
  2. LAOでカテーテル先端が心尖部に向いていることを確認する(極端に自由壁、中隔側を向いていないこと)。
  3. RAOでカテーテルの動きを確認しながら心臓のシルエットを参考に心尖部まで進める。
  4. 三尖弁輪で抵抗を感じた場合にはLAOを確認し、カテーテル先端が自由壁、中隔即に向いていないことを確認する。
  5. 右室腔内で抵抗を感じた場合にはLAOでカテーテル先端方向を確認する。カテーテル方向に問題がない場合には、肉柱にあたっていることが考えられるので、一旦、カテーテルを引き、先端を自由にしてから、再度進める。可能であれば異なった高さから進めることが望ましい。
  6. 心尖部でカテーテルが若干しなるまで進め、少し引き戻して、カテーテルを留置する。PVCなどの不整脈がでないことを確認して、カテーテルをケーブルに接続する。

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透視

 透視はbi-planeをつかったほうがいい(single-planeで習熟している人はのぞく )。
 Bi-planeを使うことにより、以下のメリットがある。

  • 心臓の3次元構造が理解しやすくなる。
  • カテーテルの心臓内における3次元的位置が把握しやすくなる。
  • 手技時間が短縮される。
  • 透視時間が短縮される。
  • 成功率があがる。
  • 合併症がおきにくくなる。

心臓までカテーテルを上げた後、bi-planeを準備する。角度は施設により異なるが(RAO30,LAO60)/(RAO45,LAO45)、LAOでみて、心室中隔がtangentにみえる角度がよい。テーブルを動かさなくても、関心領域すべて(左右心房、心室)がRAO/LAOの画面に含まれるように、テーブルの高さ、透視角度を調整する。被爆を避けるためにも、II(アイアイ)は患者側に寄せておく。

カテーテルのすすめかた:RA-IVC接合部

 カテーテルがRA-IVC接合部を通過する際は、肝静脈に迷入しないように気をつける。APでカテーテル先端が背側を向くようにするとよい。(先端が側面に向いていると、肝静脈に迷入しやすい。)
 AFLのアブレーションの際に、カテーテルがRAからIVCに落ちた後に不用意にRAに戻そうとすると、肝静脈に迷入することがある。その際には一旦カテーテルを少し引いた後に、伸ばして(あるいは先端を背側に向けて)、再度RAにすすめる。

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カテーテルのすすめかた:挿入、大腿静脈

カテーテルを受け取ったら、カーブ・堅さを確認する。デフレクタブル・カテーテルでは実際に曲げてカーブの大きさを確認する。シースに挿入する際には伸ばしておくが、血管内に入ったら、軽く曲げておくと行き先を選択しやすくなる。カテーテルを進める際には、血管の走行を予想して、カテーテルのカーブを血管に沿わせながら進める。


左大腿静脈から挿入したカテーテルは静脈弁・大腿動脈を乗り越えるポイントで抵抗があることが多いので注意する。

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誘発試験

 どのぐらいしつこくVTを追うかは、術者に依存している。

 検査中には様々な不整脈が誘発されることがあり、患者の症状の原因となる不整脈(ターゲット不整脈)、実際に外来で発生しているが症状の原因ではない不整脈、検査中のみ誘発される不整脈と様々である。不整脈医は検査中に治療すべき不整脈と放置しておいて良いものとを選り分ける必要がある。
 器質的心疾患に伴う不整脈、とくに心筋梗塞後のVTの場合にはEPS中に何種類ものVTが誘発されることがあり、どこにエンドポイントに設定するかは術者にまかされている。一般的に器質的心疾患に伴うVTのエンドポイントはアブレーション後、持続性心室頻拍が誘発されないこと(心室細動、非持続性心室頻拍は一般的に非特異的とされることが多い)が最終エンドポイントであるが、様々な条件によりエンドポイントの設定は異なってくる。最低限のエンドポイントはターゲットVTが誘発されなくなることではある。
 エンドポイントの設定に影響を与える要因としては
 1.患者の状態。心不全が重度の場合には検査時間の延長・プログラム刺激の増加に伴い、心不全が悪化する懸念があり、アブレーション後の再誘発には慎重になる。
 2.VTの因子。a.ターゲットVTの設定。ターゲットVTの12誘導心電図が記録されている場合には、最低限のエンドポイントの設定は容易である。しかしながら多くの場合には12誘導心電図はなく、ICDログ(頻拍周期、far-fieldl egm)より推測するしかない。b.誘発性。アブレーション前にプログラム刺激で容易に誘発されるVTの場合にはチェックも行いやすい。c.誘発されるVTの数。誘発されるVTが少ない場合には、チェックも行いやすいが、不安定なVTが複数誘発される場合にはエンドポイントの設定が困難になる。d.アブレーションの状況。はじめに安定した持続性心室頻拍が誘発され、よいマッピング(エントレインメント・マッピング)が得られ、アブレーションにより停止に至った場合には、再誘発を試みようという気にもなるが、アブレーション前より血行動態の破綻する速いVTのみ誘発され、マッピングもサブストレイト・マッピングに頼り、洞調律中にアブレーションをしたような場合にはアブレーションの効果に疑問がある。とくにもともとの誘発条件が厳しい場合には誘発に時間がかかることもあり、再度誘発を行うかどうかは迷うところである。
 5.検査時間。透視時間。
 
 一番は患者の状態に合わせながら検査をすすることが大事であるが、アブレーションの成果を評価するためにもできるだけ再誘発試験を行うことが重要だと感じる。

 一般的にはあっさりとした術者がfellowや看護士からは好まれる。
 

アブレーションと局所麻酔

アブレーションをするためには鼠蹊部に局所麻酔をするけど、2%キシロカイン20ccで結構な血中濃度になる。
とくに流出路起源VTの際には注意する必要がある。